再 会




   1

戦火の跡の

焦土の隅に僅かに咲いた白い蕎麦の花

太陽はひとときその蕎麦の細い紅根に明るく沁みて

また暗く淋しく翳ってゆく

ひとしきり風が強くすぐ雨が来るかと思われたが

黒い雲だけが頭上を過ぎた。

たちすくむ二人の目の前に拡がるものは

果てしない海のような荒寥とした焼跡の瓦礫だけだ。

見よ焦土の空を翔く雲は黒く――低く大きく

世にもいたましき光景を呈し

晩秋の太陽を半空に奪って走る 走る

不気味な暗影を大地に落としたまま……



   2

あなたの瞳は私の心を問い詰める

「――平和とは、なに?」

「空襲がなくなった焼跡のまちのこの寂しさだけだ」と私は言う。

「――自由とは、なに?」

「自由とはなにもしなくて眠っていても罰せられなくなったことだ」と

私は言う。

兵隊から帰ったばかりの私にとって

ほかに何を言うことがあろう!



悲しむことも忘れ怒ることも忘れ

ただ血のぬくみほどの願望だけで

私はあなたのそばに立つ。





玉一詩集