煙 突
先端の焼け折れた煙突が
夕空に突き立っている
その天辺にふと私はありありと見る
舞うような中天に無造作な丸太の足場を組んで
黙々と動いている黒い影
不様に折れた頂きで
敢然と反りかえり
両手でハンマーを降っている小さな男
熱のない朱い夕日が照り映えている
河沿いの土堤道で
風のなかの幽かな槌音をききながら
私は切り立った太い赤煉瓦の六角の胴体を仰いで見る
――彼は、どこから登ったのか?
澄んだ藤色の中天で
一人毅然として雑役を避けている彼
自由で孤独な彼
玉一詩集