日 和






私は帰る

生垣の続く閑かな道を私は帰る。

澄明な雪晴れの日が輝いている青空の下を

私は日に透されて歩いている。

姉に借りたいささかの金を握りしめて

長い病苦のような貧苦の枷から

しばらくは放たれた思いになって。

歩きながらふと私は見上げる。

通りがかりの生垣の上

竹竿に通されて

可愛らしい赤子の肌着が揺れているのを。

日差しに透いた淡紅の色紙ほどのその肌着の初々しさ。

仰いでゆく私の心に

あふれるようなよろこびが湧いてくる。

心の中の虚しい部分に

ふく、ふくと、暖かいふくらみがはいるように

久しい邂逅のように私はそれと向かい合う。



私は不思議な気がしてならない。

このような和やかな空気のあったことが

私の感動を新たにさせる。

いいようのない伸び伸びとした広い世界が

限りなく拡がっていくことが!



澄んだ日差しの耀いている青空の下

茂った檜葉垣の上

雑多な親達の衣類に交って

愛らしい赤子の肌着が揺れている。

淡紅のガーゼの肌着が揺れている。





玉一詩集