金策旅行(1)
強い雨が
向いの家の
豊かな広い瓦屋根でしぶいている。
私はむなしく
通りの店屋の軒下で雨をさけ
煙るような雨足を眺めながら
駅へ帰るバスが来るのを待っていた。
――こんな雨がすぎる頃から
秋は急に深まるものだと
夏姿の半ズボン
靴底に穴があいた兵隊靴を気に病んでいた。
金は貸さず
傘だけを貸してくれた
屈託のない友の顔を思いながら
妻への言い訳を考えていた。
玉一詩集