角度
黄昏。トラックが、勢いよく砂塵をあげて、私を追い越してゆく……
荒れはてた川沿いの凸凹道で。
と、そのとき、横を向いて、埃をさけた私の眼に、ふと
異様なくれないの色が映ってきた。
川沿いの古ぼけた二階家の、大きなガラス戸。
そのなかの真四角な一枚が、落日を照返し、ふしぎに
あかあかと燃えていた。
その一枚に、一枚だけに、鮮やかに輝きながら
焼けついているものはなにか!
浅い夢ばかりみて、いつもうろうろしている私よ、私の心よ。
心を空しく、たえず対象に焼けついてゆけ!
玉一詩集