かいつぶりの話







鳥撃ちの好きな義兄が鴨撃ちに行き

鴨が穫れずかいつぶりを撃った話をした。

「かいつぶりは食えるの?」

私は訊いた。

「あいつは駄目だ。体中に虱がいっぱいにたかっているんだ。」



信じられない話であった。

私はそのときかいつぶるの体にたかっている虱を憎んだ。

小さな体にいっぱい虱にたかられて冷たい水の上で暮らしている。

剽軽な貧しいかいつぶりのことを思った。



そのとき義兄は

どういうつもりでその話を私にしたのか……



二十年以上も昔のことだが

それが私に忘れられない。



玉一詩集