松 浜






日が昏れた松浜は

ひととき風がおだやかだ

工員達が宿舎にかえり

遠い陸の山並みから

丸い月が昇りそめると

松浜はまたあの冬の

寒い唄をうたいだす

白々と夜が明けそめるまで……



  ※

月が明るい

真夜の松浜が気になって

彼はたびたび目をさます



  ※

日の出前の松浜は

ひととき波がおだやかだ

早起きの工員達は

神社前の松林の

松の落葉を掃き清め

林の中で焚火する

痩せた肩を寄せ合って

手と足を暖たためた

海のおもてが

紅い朝やけに染まるまで……



玉一詩集