嵐の夜






嵐は過ぎた。

残った雨が妙にひっそりと聞かれる晩。

風に裂かれた樹木の生臭い樹脂の匂いが

家の周囲に漂っている

灯の消えた湿った部屋の中に

白い太いローソクが点される。



昔、はじめて点された火のように

細い芯を中心に

平静に燃えつづけるローソク。

端正な炎の姿は

部屋の中をほのと照らして

嵐におびえた人の心を円らかにした。



玉一詩集