海を想う日






風が吹いて

爽やかな風が吹いて

丘の上の松の森にぶつかる

森は少し傾いていっせいに鳴りだす

はるかな潮ざいに似た長い歌を空いっぱいにひろげながら

ああなつかしい六月の丘の上

丘の向こうにたえずはるかな波の音が聞こえるので

私は海の近くにいるような気がする



波の音は次第に高く

はてしない弓なりの砂浜に

ひろびろと晴れた空を載せて寄せてくる海

あの碧い海!

過ぎた夏のあの浜べの

松林のなかの簡素なレストランで

あのときみたされた僕の閑雅な食事

またあのとき

清々しい潮風に吹かれながら秘めやかな木洩れ日をあび

駈け廻って私と遊んだ少女達!

遠い夢の日!





玉一詩集