松籟
――呉・亀ヶ首
「――星が出ていて、今夜は明るい」
そう言いながら二人三人
工員が寒そうにおそい風呂から戻って来る。
窓の下の暗い石道を響かせて
一日中降った雨の後が
一層寒気を呼ぶのだろうか
毛布を引き寄せ彼は早く寝るのだが
寒さが身に沁み
海の上の星空が気になって
その夜もなかなか眠れなかった。
もと海軍の火薬庫であったという
ここ島かげの彼の宿舎まで
毎夜浜の松籟が聞こえてくる。
玉一詩集