M子と私





その頃のお前は

まだ小さい胎の児と一緒に

どう言うわけか

私が十九

お前が十八の夏。

子供の戯れにしては

それは余りに傷が深すぎた。

 

私はかなしく

百日あまりも

折りにふれて涙ばかり流して暮らした。

胸がつかえて

二、三日はろくに飯が食えなかった。



近所の人の話では

胎の児をどう始末したのか

勝気なお前は

没落して腑抜けになった親父を助けて

借金背負い

遠い港町の色町で

苦界に沈んだということだった。



私はそれから

お前と交わしたいろいろの約束ごとを

ことさらに破っていった。

私はいま三十五歳

二人の子供の父親だ。

その夜酒の上の集りで

商売女と遊ばぬと言う私を

酔余に或る詩人が笑いとばした。



私は知っている

お前がこの町に戻って来て

いまもなを働きつづけていることを……




玉一詩集