橋のない虹






               ――藤原審爾に


しずかな糠雨が微光を浴びて漂っている

その中を太い雨が

ひとしきりパラパラと平らかな地面を叩いて去く。

 

なにげなく無心に移ろうかけがえのない時間のなかに

ひとの素直な愁いがあって

橋のない虹のようなうす茜が

うら哀しく周囲を染める。



――今時分、君はまた微熱を病んで

ほんのり上気した頬を白いベッドに埋めているのではない

かしらん。

ふとそんな君のことを想いながら

妙な空模様に私は不安を感じている。





玉一詩集