初秋






暑気の消えた朱い夕陽が

広い街路を照らしている



ゆたかな風が街にあふれ

パラソルをたたんだワンピースの娘が

二人

横に並んで

風に向かって身を押しつけて歩いて来る



路上に車が行き交い

開いた家の窓からカーテンが外に出て風に流れ

プラタナスの淡い影が

歩道の上で身悶えている

日焼けした私の情緒が

淡い夕陽に濡れるとき!



  ※



風にあふられ

軒の簾が優雅な影を抛げている。

涼しい風がおだやかに吹き抜けてゆく黄昏の部屋で

私はまたあたらしい装いをする

私の微妙な生、この重さ、爽やかさ。



秋が来る満点の清々しい気流のなかで

自然はやさしく私にささやく――

さあ迅かに身支度をしよう

死に先立つ前の身支度

あの心の身支度!




玉一詩集